紫根ってどんな生薬?
紫根はムラサキ科の紫草の根を乾燥させたもので、その名のとおりの鮮やかな紫色と強烈
な独 特のにおいに特徴があります。漢方生薬の分類では「清熱薬」といって、
からだの中の熱をさま す働きを持つ薬の仲間に分類されます。
紫根は、麻疹や水痘にかかって、発疹しそうで発疹しな いときに、他の生薬と
いっしょに 煎じて飲むと、完全に発疹して病状が軽くなるので、漢方薬の
世界では、
昔から麻疹や 水痘の薬としてよく知られていました。
また、最近の中国では癌の治療 にも使われています。 紫根のもつ抗炎症作用や
解熱作用と関連があるようです。
紫根の特徴
紫根には他の漢方生薬と違った特徴がいくつかあります。ひとつは、
漢方生薬のほとんどは、 煎じて内服するというのが一般的な使い方であるのに対して、
紫根はむしろ塗り薬として外用さ れる生薬として有名だということです。
また、もうひとつの特徴は、皮膚に関するトラブルにつ いては、とにかく色々な症状に
よく効くということです。紫根は外用して使用すると、炎症を抑
える、解毒して発疹を治める、
皮下の血行を改善する、禿を治す、傷の癒合を促進する、皮膚の
再生を促すなどの
作用があるため、古くから軟膏や化粧品の材料として広く利用されてきました。
華岡青州と紫雲膏
紫根を配合した有名な処方に「紫雲膏」という軟膏があります。紫雲膏は、江戸中期の
日本の医家で、世界で初めて全身麻酔術を成功させたことで有名な華岡青州
(はなおかせいしゅう)(1760-1835 宝暦10-天保6 )が考案したものです。
青州は「外科正宗」という 古典文献に記 載されている潤肌膏という処方をもとに、
自らの工夫を加えて紫雲膏を完成させ、その効能を、 「肌を潤し、肉を平らかにし、
瘡痕色変じたるを治す」としました。 紫雲膏の作り方は、胡麻油を煮て、豚脂
(ラード)と ミツロウを入れて溶かし、紫根とともに 当帰という生薬を入れてから、
さらに煮てから布で濾すだけの簡単なものです。材料さえそろえ
ば私たちでも
キッチンで作れてしまほどシンプルな軟膏です。ところが、この紫雲膏は、現在でも
日本の漢方外用薬で最も重要なものとされていて、湿疹、乾癬、皮膚炎、ニキビ、ひび、
あかぎれ、しもやけ、かぶれ、火傷、凍傷、円形脱毛症などの治療に優れた効果があり、
江戸時代か ら現在に至るまで幅広く使われ続けている超ロングセラーです。
紫根と紫雲膏
紫雲膏に配合されている生薬は紫根と当帰の2種類だけで、当帰にも、皮膚を滋潤する、
シミを取り除く、皮膚の再生を促すなどの作用がありますが、一般
的な紫雲膏では
紫根は当帰の2倍 の量が配合されていますから、その効果
は上記のような紫根の効能に
よるものが大きいと言えま す。紫根を配合したことで、紫雲膏は上記のような様々な
皮膚のトラブルに効果をあらわしてき たのです。
紫根オイル
中国には、昔から、紫根を植物性の油脂にとかした紫草油というものがあり、
手足のあかぎれ、 湿疹様皮膚炎、女性外陰部の炎症などに使われている他、シワの予防や
改善のために美容目的で顔に直接塗られたり、化粧品に混ぜて使われてきました。
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